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なぜ統計値の概算は広まらないか

概算見積をするとき、坪単価や躯体歩掛りなど床面積あたりの統計値をよく使います。
統計値の見積りは、計算が簡単で便利なのですが、精度はあまり高くないと皆さん感じていらっしゃると思います。
ベテランの積算技術者の中には、長年の勘と経験で統計値にサジ加減を加えて良い精度を出す方もいますが、誰でもできる技ではありません。

なぜ統計値は精度が高くないのでしょうか。
統計値の精度が悪いと言うと、「統計解析に使ったサンプル数が少ないからだ。サンプルをもっと集めれば精度は上がる」とおっしゃる方が良くいます。しかしこれは間違いです。
散布図で見ると、サンプルを増やすと点の密度が高くなるだけで、バラツキの幅が小さくなるわけではありません。
下図はそのイメージです。赤い矢印の長さは同じです。
(クリックで拡大できます)

ファイル 6-1.jpg

統計解析の本によると30件以上サンプルを集めれば、母集団の予測はできるとあります。またある選挙の予測では、6800万人の有権者からたった38,200人(0.06%)のサンプルで正確な予測を得ています。

精度が高くない原因は、サンプルが少ないからではなく、説明変数が少ないからです。
床面積というたった1つの変数で、建物を予測するのは無理です。
精度を上げるために、構造,用途,階数などでサンプルを層別したり、重回帰分析をしたりすることもありますが、それでも変数は数個です。


また統計値の別の問題として、データ収集が難しいということがあります。
概算見積をするとき、「昔やったあの建物は坪いくらだったかな」と思っても、簡単に資料が出てこない経験は皆さんお持ちでしょう。
「これではいけない見積りデータを整理しよう」と考えても、忙しさにまみれてなかなか整理できません。
頑張って整理できても、数年経つと物価変動で金額データは陳腐化し、構造データも法規の改正などで陳腐化してしまいます。

私も社会人になった20年以上前から、紙による収集やパソコンによる収集など、何回か試行錯誤しましたがあまりうまくいきませんでした。

このようなことが、統計値の概算が広まらない理由だと考えます。
統計値の概算見積は、企画段階では簡単な計算で工事費を予測できるので有用だと思いますが、基本設計以降ではもう少し精度の高い概算手法が必要でしょう。
ではまた来週。

コメント一覧

スズキ Eメール 2014年03月19日(水)09時43分 編集・削除

統計値による概算手法の精度についての話題ですが、私は概算把握時に必要なのは、数量値だと思っています。
パラメータとして、延べ床面積に対して階高影響係数・
地下が有れば割増係数などを設定して、概算数量を出す。
躯体資材時価と仕上げ総面積に対するグレード別時価などを掛け合わせれば、算出精度が上がるかと・・・
昔、杭の耐力Ton/杭長m 当り単価表などは結構精度が良かった記憶が有りますが。

管理者 2014年04月05日(土)15時58分 編集・削除

コメントありがとうございます。
迷惑メールが多いので、それに紛れて表示が遅くなって申し訳ありませんでした。
スズキさんのおっしゃるとおり、まずは正確な数量把握です。階高影響係数、地下割増係数など有効でしょう。

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